肝硬変|いしい内科・糖尿病クリニック|岩手県盛岡市
いしい内科・糖尿病クリニックでは、肝硬変の検査・治療を積極的に行っています。
肝硬変が進行してしまうと元に戻らなくなるので、早期のうちに病気の進行を防ぐ必要があります。早めの受診を心がけましょう。
肝硬変とは
肝硬変とは、肝細胞が死滅・減少することによって、肝臓が硬く変化し、機能が著しく悪くなる病気です。
B型、C型肝炎ウイルスやアルコールなどによる肝炎が原因で、肝臓の中の代謝がうまくいかなくなります。
長い間症状がないこともありますが、肝硬変が進行すると重い症状がでます。
また、肝硬変から肝臓がんに移行することがあります。
肝硬変の原因
日本人の肝硬変の原因として最も多いのはC型肝炎ウイルスによる肝硬変で、全体の2/3を占めています。次に多いのはB型肝炎による肝硬変です。
お酒を飲みすぎてもアルコール性肝硬変になりますし、お酒を飲まない方でも、脂肪肝が原因で肝硬変になります。
肝硬変の症状
肝硬変の初期の頃には、ほとんど症状はありません。それは、肝臓には「代償能」という能力があり、肝臓の一部に障害が起こっても、残りの部分がそれをカバーして働くためです。
しかし、その機能にも限界があり肝硬変の病状の進行とともに様々な症状がでてきます。症状のない状態を代償性肝硬変、症状のでてきた状態を非代償性肝硬変と言います。

炎症が持続し、肝硬変が進行して非代償期になると、自覚症状として全身倦怠感や疲れやすい、食欲がないなどの症状がでてきます。肝硬変が進行すると黄疸や腹水などの様々な症状が現れます。
肝硬変の検査
血液検査
AST、ALT | 肝臓の炎症の程度がわかります。正常値は30 単位以下と考えられています。 |
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血小板数 | 正常値は20 万以上ですが、肝硬変が進むにつれて減少します。10 万以下の場合は肝硬変の可能性が高いと言えます。 |
アルブミン(Alb) | 肝臓でつくられるタンパクで肝臓の働きが低下すると減少し、足のむくみや腹水が出現します。 |
ビリルビン(Bil) | 肝臓で処理する物質です。肝臓の機能が低下すると滅中で増加し、皮膚が黄色くなる「黄疸」という症状が出現します。 |
腹部エコー(当院症例)

肝硬変になると、肝臓の表面がコブだらけとなり、ゴツゴツして不整になります。また、肝臓内部も不整で粗造に見えるようになります。

肝硬変が進行すると、脾臓が大きくなります。
胃静脈瘤(当院症例)
肝硬変が進行すると、食道や胃に静脈のコブができます。これが破裂すると、大量の消化管出血(吐血や下血)を引き起こします。


破裂の危険性がある食道・胃静脈瘤が見つかった場合、治療可能な病院に紹介いたします。
肝硬変の重症度分類
Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類
肝硬変の重症度は、「Child-Pugh(チャイルド・ピュー)」という分類を用います。下記の表の5項目の合計点数で3段階に分類します。
1点 | 2点 | 3点 | |
脳症 | ない | 軽度(Ⅰ、Ⅱ) | 時々昏睡(Ⅲ~) |
腹水 | ない | 少量(1~3L) | 中等量(3L~) |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
各項目の合計点で、重症度を判定します。
- グレードA(軽度):5~6点 代償性
- グレードB(中等度):7~9点 非代償性
- グレードC(重度):10~15点 非代償性
グレードA(軽度)
軽症の肝硬変で、肝臓はまだ十分働いている状態です。(代償性肝硬変といいます)
グレードB(中等度)
中等症の肝硬変で、肝硬変の合併症(症状)がみられます。(非代償性肝硬変といいます)
グレードC(重度)
重症まで進行した肝硬変で肝臓の機能が維持できなくなり、様々な合併症(症状)があらわれます。(非代償性肝硬変といいます)
肝硬変の合併症
1⃣肝性脳症
肝性脳症とは、正常なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる合併症です。
肝性脳症を発症すると、意識障害、異常行動、はばたき振戦などの神経症状が現れます。
2⃣腹水・浮腫
肝硬変になると血液が肝臓に流入しづらくなり、血液の流れが悪くなります。それにより血液の成分が血管外に染み出します。
また、肝機能が低下するとタンパク質が減少します。血液の成分の割合が変化し、血液の成分が血管外に染み出し、お腹や手足に水分が溜まります。
3⃣カルニチン欠乏症
肝硬変ではカルニチン量が低下し、高アンモニア血症、肝性脳症のほか、筋痙攣(こむら返り)の原因になります。
カルニチン欠乏症には、エルカルチン®を処方します。
4⃣亜鉛欠乏症
肝硬変では亜鉛の吸収低下や尿中排泄の増加により、亜鉛欠乏になりやすいです。
5⃣皮膚掻痒症(皮膚のかゆみ)
肝硬変に伴う皮膚のかゆみは、皮疹がなく、全身のかゆみを特徴とします。
肝硬変に対する皮膚のかゆみに対して、まず抗ヒスタミン薬とレスタミンクリームを処方します。効果がない場合、レミッチ®を処方します。
6⃣肝臓癌
肝硬変の患者さんに腹部エコー検査を施行したところ、肝細胞癌を認めました。治療目的で岩手医科大学に紹介しています。肝硬変の患者さんには肝細胞癌が発生しやすいので注意深い経過観察が必要です。
